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カラ−テレビ事件(5) <国道交差点 > |
テレビを担いだ男が先頭を行くへんな行列は、国道の交差点 まで来ました。 この交差点を越えると、大野さんの家まではあとわずかです。 電気屋さんは青くなりました。 「このままでは、高価なカラ−テレビを大野さんに取られて しまう」 「あなたがばかな賭けをするからよ」 どうやら、奥さんに責められているようです。 運の悪いことに、交差点の信号が赤になりました。 大野さんはテレビを降ろして座り込みたくなりました。 「ここで止めたら、いままでの苦労が水の泡になってしまう」 と思い、必死で耐えています。 やっと信号が青に変わりました。 大野さんはふらつきながらも、なんとか交差点を渡りました。 「もうすぐ大野さんの家に着くぞ」 「がんばれ!」 「がんばれ!」 同僚たちは、大野さんが勝ったと思いました。 そのとき突然、電気屋さんが軽トラックを止めました。 そして、車から降りて来て大野さんの前に土下座したのです。 「大野さん!私の負けです」 「けれども、このテレビを持って行かれては店がつぶれて しまいます」 鞄からお金を取り出しました。 「なんとか、この3万円で勘弁してください」 「おねがいします!」 頭を下げたまま両手でお金を差し出します。 当時の3万円は大金です。 大野さんはテレビを担いだままその場に立ちつくしていました。 −つづくー |
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