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カラ−テレビ事件(2) <電気屋にて > |
ある夏の日、大野さんは家の電球が切れたので、 電気屋さんに出掛けました。 店内には、最近発売になったばかりのカラ−テレビが 展示されていました。 その頃のカラ−テレビは、家具調デザインのすごく 大きな物でした。 「よう。でっかいテレビがはいったなあ」 「いらっしゃい。新発売の日立キドカラ−ですよ。 大野さんとこにも一台いかがです」 「そりゃカラ−テレビはほしいが、わしの給料ではとても 手がでないよ」 大野さんは、カラ−テレビを横目で見ながら残念そうに 言いました。 電気屋さんは大野さんが力自慢なのを知っていたので、 ちょっとからかってやろうと思い、 「いくら大野さんでも、このテレビをお宅まで担いで 帰るのは無理でしょう」 「おい、馬鹿にするなよ。太鼓台に比べりゃなんてことないぜ」 太鼓台というのは、この地方の秋祭りに登場する 山車(だし)のことで、重さが2トン以上あり、 それを百数十人で担いで町中を練り歩くのです。 電気屋さんもムキになって、 「そんなに云うなら、賭けようじゃないですか。 本当に担いで帰れたら、このテレビを只であげてもいいですよ」 電気屋さんは、まだ大野さんの恐ろしさをよく知らなかったの です。 大野さんは目を輝かせてその話に乗ってきました。 「よし。やってやろうじゃないか」 「そのかわり失敗したら、このテレビを大野さんに 買っていただくということにしましょう」 「いいだろう。だが、きょうはもう外も暗くなってるし、 明日の夕方にしょうか」 「いいでしょう」 電気屋さんはカラ−テレビをポンと叩いて云いました。 −つづくー |
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