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おもしろい話 < よしよしじいさん >

  むかし、ある村によしよしじいさんという人がおった。
  じいさんはとてもお人好しで、何を言われてもすぐ「よしよし」と
  言って人に親切であったので、村人からは「よしよしじいさん」
  と呼ばれておった。
  もちろん、じいさんには「むつごろう」という名まえがあって、
  子供のころには「むっちゃん」といっていたのだけれど、
  今では、よしよしじいさんの名まえを覚えている村人は誰もいない
  のであった。

  あるとき、よしよしじいさんはとなり村の祭りにいくことなった。
  となり村は峠を一つ越えたところにあり、昼すぎに村を出れば
  夕方には着けるはずであったが、働き者のよしよしじいさんは
  朝から畑仕事をしていた。
  昼前には終わるはずであったが予想以上に時間がかかり、
  終わったのは3時過ぎであった。
  よしよしじいさんは、
  「しまった!もうすこしはやくやめればよかった…」とおもったが、
  のんびりやのじいさんは、「まあいいや今から出ても少し遅くなる
  だけで、弁当を持っていけば、今夜は満月だし峠で月見酒でも
  飲もう。
  となり村には遅くなると連絡しておこう」そう言って、
  よしよしじいさんは、酒とべんとうを腰にぶら下げて、山に向かって
  歩いていった。

  予想通りというか山道にさしかかる頃には日が暮れてしまった。
  よしよしじいさんはあわてることもなく、
  山道を「よしよし」と言いながら登っていった。
  やがて峠についたので、よしよしじいさんは一本杉のところで休む
  ことにした。
  その晩は月がとてもきれいで、よしよしじいさんは月を見ながら
  酒をのんだ。
  よしよしじいさんは畑仕事で疲れていたせいか、いつのまにか
  寝込んでしまった。

  どのくらい時間がたったかわからないが、よしよしじいさんが
  誰かの呼ぶ声で目を覚ますと、目の前にきれいな娘が立っていた。
  よしよしじいさんは、こんな山の中に娘がいるはずがないので、
  これは何かの化け物に違いないと思った。
  そのとき、よしよしじいさんは村に伝わる話を思い出した。
  その話というのは…。
  峠の一本杉には大蛇が住むということじゃった。
  「そうだ!こいつは大蛇にちがいない。娘の姿で安心させておいて、
  そのうちに食べられてしまうかもしれんぞ」
  娘はにっこり笑いながら、「おじいさんは何をしているんですか?」
  と聞いた。
  よしよしじいさんは、人間だというと食べられると思ったので、
  「わしはタヌキじゃ」といった。
  娘は「やっぱりそうか。おまえは目がたれているので人間ではない
  とおもった」と言い、たちまち大蛇の姿になった。

  よしよしじいさんは怖くて体がふるえたが、ここで逃げてはタヌキで
  ないのがばれると思い、顔だけはニコニコ笑っていた。
  大蛇は、よしよしじいさんがタヌキだと知って、食べられないので
  がっかりしたが、
  よしよしじいさんが持っていた酒と弁当をもらって食べるうちに
  機嫌がよくなり、よしよしじいさんと話がはずんだ。
  大蛇の話によると、もっとも苦手なのはたばこのヤニで、
  それをつけられると死んでしまうということじゃった。
  ところで、タヌキのおまえは何が苦手かときくので、
  よしよしじいさんは「わしは人間のもっている小判がきらいじゃ」
  といった。
  大蛇は上機嫌で、
  「わしの住んでおるのは、この先にある滝のほら穴じゃ。
  近くに来たら寄ってくれ」といった。
  そして、「わしは800歳じゃが100歳を越すと誰でも化けら
  れるようになる」といった。
  おまえは何歳じゃと聞かれたので、
  よしよしじいさんは、「わしも800歳じゃ」とうそをいったのは
  言うまでもなかった。
  大蛇は、
  「おまえもタヌキなんだから化けくらべをしよう」と言い出した。
  よしよしじいさんはあわてたが、
  「そうだ!まつりの仮装行列の衣装があった」と思い、
  大蛇と化けくらべをした。
  よしよしじいさんの仮装は村でも評判で、とても上手だったので、
  大蛇も感心してしまった。
  やがて夜が明けてきたので大蛇は帰っていった。

  となり村についたよしよしじいさんは大蛇の話を村人にした。
  村中から集めたたばこのヤニを、村人たちは峠の大蛇の住む
  ほら穴に投げ込んだ。
  大蛇は大慌てでほら穴から逃げ出し、苦しみながら滝つぼに
  落ちていった。
  やがて祭りも終わり、よしよしじいさんが家に帰ると、
  家の中にたくさんの小判が投げ込まれていた。

     ---おしまい---
 
作成日不明


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